AI検索での見え方を測る公式窓口 —— Google・Microsoftの無料コンソールと、その前提
2026年の前半に、AI検索の計測をめぐる前提が入れ替わった。それまで、生成AIの回答に自社サイトがどう出ているかを知るには、海外の有料ツールを買うか、サーバーのアクセス記録を自力で解析するしかなかった。ところが6月に入って、GoogleとMicrosoftが相次いで、自社のAIの回答での見え方を示す無料の窓口を出した。プラットフォーム自身が計測の入口を提供し始めたことになる。
このノートは、その2つのコンソール(=サイト運営者向けの管理画面)と、それを読むために必要な前提を、4本の一次情報から整理する。前提とは、AIのクローラー(=サイトを巡回して内容を読み取るプログラム)が何のために来ているのかという話と、AIに薦められた効果がどこに現れるのかという話である。この2つを知らずにコンソールの数字だけを見ると、判断を間違える。
Cloudflare —— AIの巡回は「学習のため」が半分を超えた
まず全体の状況から見る。Cloudflare(=世界のウェブ通信の相当量が通過するネットワーク事業者)は2026年7月1日、インターネットを流れる通信の半分以上が人ではなくなったと報告した。同社は自社のネットワークを通る巡回を、目的別に分類して公開している。分類は学習用、検索用、利用者の操作を起点とするもの、の3つになる。
数字としては、学習を目的とする巡回がAIの巡回全体の半分を超えた。さらに、用途を兼ねた巡回、つまり1つのクローラーが複数の用途を担うものが3分の1を超えている。出典元がクローラーの通り道そのものを運営している事業者なので、これはアンケートではなく自社計測(first-party measurement=当事者が自分の設備で取った実測値)にあたる。
ここに運用上の落とし穴がある
「学習には使わせたくないが、検索には出したい」という要望は自然に見える。しかし、それが通るのは相手が用途を分けている場合に限られる。Googleは検索用の巡回と学習用の巡回を分けていない。そのため、エッジ(=ネットワークの入口にあたる場所)で学習用の巡回を遮断すると、Googlebot(=Googleの検索用クローラー)ごと止まる。結果として索引づくりそのものが行われなくなり、検索流入が落ちる。
設定を代行する立場でこれを取り違えると、そのまま事故になる。用途の分け方は各社ばらばらなので、遮断設定を請け負う前に、相手ごとの分け方を文書で確認する工程が要る。
Google —— AI面のレポートと、出ないという選択肢
Googleは2026年6月3日、サイト運営者向けに2つのものを出した。ひとつは、Search Console(=Googleが提供する、自社サイトの検索での状況を見る無料の管理画面)にAI面(AI surfaces)の掲載データが加わったことである。これにより、自社のページがAIの回答に出ているかどうかを、推測ではなく確認できるようになった。
もうひとつは、通常の検索順位に影響を与えずに、生成AI機能から外れる切り替えである。これまでは、検索エンジンに読ませるか読ませないかという、ほぼ全部か全部でないかの選択しかなかった。有料記事や会員向けの内容を持つ発行者にとっては、検索には出しつつ生成される回答には使わせない、という選び方が新たに成立する。
提供は段階的で、英国のサイト運営者の一部から始まっている。日本での提供時期は公式発表に書かれていない。
Microsoft —— 引用の占有率まで見せ始めた
Microsoftは2026年6月16日、Bing Webmaster Tools(=Bing向けの、Search Consoleに相当する無料の管理画面)に4つの機能を追加した。2026年2月に公開したAI Performanceレポートを土台にした拡張になる。
- Intents(意図) —— どういう意図の問い合わせで引用されているか
- Topics(話題) —— どの話題領域で引用されているか
- Citation Share(引用占有率) —— ある問い合わせ群の引用枠のうち、自社がどれだけを占めているか
- Compare(比較) —— 他サイトとの比較
注目すべきはCitation Shareである。これは絶対値ではなく競合との相対値になる。自社の引用回数が増えていても、市場全体が伸びていれば占有率は下がる。逆に引用回数が横ばいでも、競合が落ちていれば占有率は上がる。順位という考え方に近い指標が、AI検索の側にも出てきたことを意味する。
無料であり、Copilot・Bing・提携先の面をまとめて見られるので、受注前の無料診断としてそのまま使える。ツールの購入を提案の前提にしなくてよくなった点は、実務上の変化として大きい。
Similarweb —— 効き目は指名検索として現れる
ここまでの2つのコンソールが答えるのは「出たかどうか」までである。出たあとに読み手がどう動いたかは、どちらにも含まれない。その先を測ったのがSimilarweb(=ウェブ全体の利用状況を推計して提供する調査会社)の2026年6月23日の記事になる。
調査は、AIの回答でブランドを薦められた利用者が、その後どう行動したかを追っている。条件を2つ絞っている。ひとつは、そのブランドのサイトを以前に訪れたことがない人に限ること。もうひとつは、質問文の中で自分からブランド名を出していない人に限ることである。これで、もともと知っていたから来た分を除いている。
結果
薦められた人は、その後7日以内にそのブランドのサイトを訪れる割合が2.5倍になった。訪問後の行動も違い、見るページ数がおよそ2倍、滞在時間も2倍になっている。
問題はここからである。薦められた人がサイトに来るとき、半分を超える人はブランド名で検索して来ている。記事はこれを56%近いとしている。薦められていない通常の訪問では、これが40%ほどになる。差は16ポイントほどだが、この引き算は原文の数字ではなく、概数どうしの計算である。どちらも記事はおよその値として書いているので、差の大きさも幅を持って読む必要がある。
なぜアクセス解析に出てこないのか
つまり、AIの回答を見た人は、その場でリンクを踏むのではなく、数日後にブランド名を検索して来る。アクセス解析はこれを、単なる指名検索からの流入として記録する。記事は、アクセス解析はこの2つがつながっていることを知らず、指名検索の訪問として記録してそれで終わりで、AIの推薦には何の手柄も付かない、と書いている。
この記事はSimilarwebが持つ推計データにもとづく調査であり、標本数も観測期間も記載がない。対象は3業種に限られる。同じことが日本の案件でも成り立つかは、この記事からは確認できない。
ここから導かれること
3点にまとめる。
第一に、計測の入口は無料になった。AI検索での見え方を測るために有料ツールを買う必要は、少なくとも入口の段階では無くなった。GoogleとMicrosoftの両方が窓口を出しており、とくにMicrosoftのほうは引用の占有率まで出る。受注前の診断をここから始められる。
第二に、コンソールは露出までしか答えない。出たかどうかは分かるが、出たあとに人がどう動いたかは分からない。そして効き目は、AI経由の直接流入ではなく指名検索の増加という形で現れる。AI経由の流入数だけを成果指標に置いていると、効いているのに効いていないように見える。指名検索の量と着地ページを、施策の前後で比べる形に組み替える必要がある。この数字はSearch Consoleで無料で取れる。
第三に、遮断の設定は用途の分け方を確認してからにする。巡回の半分は学習目的になったが、Googleのように用途を分けていない相手がいる。分けていない相手に対して学習を遮断すると、検索からも消える。
出典・参考
- Content Independence Day, one year on: building the business model for the agentic Internet —— Cloudflare公式ブログ(2026年7月1日)
- New opportunities, control and insights for website owners —— Google公式ブログ(2026年6月3日)
- New AI Visibility Insights in Bing Webmaster Tools: Intents, Topics, Citation Share, Compare —— Microsoft公式ブログ(2026年6月16日)
- Introducing AI Performance in Bing Webmaster Tools (Public Preview) —— Microsoft公式ブログ(2026年2月)
- Being Recommended in AI Makes Users 2.5x More Likely to Visit Your Site —— Similarweb公式ブログ(2026年6月23日)
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